テーマ
家族(家庭)や友人といった人々の人間関係や距離感という一般的なテーマをベースとしつつ、その裏側に隠れる孤独や切なさ、不安感、倦怠感(アンニュイ)など、露呈されにくいものの存在を描き、じわじわとした不気味な恐怖感、あるいは不可解な謎として表出させることで生まれる非日常(=日常に潜む狂気)を作品のテーマ(コンセプト)としています。
また物語の多くは、夏の時間を過ごす人々の心模様を描いています。夏特有の茹だるような熱の満ちる空気や夕暮れに吹く心地よい風、騒々しい蝉の鳴き声……そんな温度と季節感のある世界観を演出するとともに、時折垣間見られるシュールでどこか病的で幻想的(頽廃的)な印象深い描写もまた静かに翳るを彩るテーマとなっています。
物語
N大学の学生森月涼子は友人である植木里紗、マニアと共にゼミの課題である学外調査を終え、夏の猛烈な暑さから逃げるように喫茶店へ入った。世間で話題となっている"女子高生失踪事件"の真相について語る二人の会話を耳にしながら、涼子はふと葉一のことを考える。
もし、葉一が行方不明になってしまったら……。
涼子にとって"家族"とは? "大切な存在"とは? そして、消息を絶った葉一の"過去"とは?
翳りゆく二人の夏が、"終わり"と"始まり"を告げようとしていた――。
登場人物